大淀川右岸地区は、宮崎平野の中心部を流れる大淀川下流の右岸に位置し、清武川流域に展開する約1,938haの農業地帯です。受益地は、宮崎市田野町のほぼ全域と古城、椎屋形、時雨地区及び宮崎市清武町の約3分の2の農地となっています。
国営かんがい排水事業大淀川右岸地区の概要
国営かんがい排水事業大淀川右岸地区は、大淀川水系境川の上流に天神ダムを設置し、ダムから受益地の輪換耕地(水田)や畑に農業用水を導水・配水するためのパイプラインなどの建設により、農業用水の安定的な確保と供給を目的としたものです。
大淀川右岸地区が国営事業着手にいたるまでの経緯
大淀川右岸地区は、南九州特有の黒ニガ、赤ホヤなどの火山性の土壌に覆われ、梅雨期や台風期には集中豪雨に見舞われることから、土壌浸食や流亡などの災害が度々発生しており、土地の生産性も低く収益性に乏しい状況でした。
また、水田は清武川の支川やため池への用水依存でしたが、水源が乏しく、小規模な用水路のため、用水不足をきたしていました。畑においては、用水施設はなく、天水に頼っていたため、生産可能な作物は限られ、生産量も不安定でした。このため、消費者の多様なニーズに対応した産地形成などの取り組みも思うように進みませんでした。
その後、国の事業(国営かんがい排水事業)により、水源としての農業用水ダム「天神ダム」と農業用水を送排水するパイプラインなどを建設し、農業用水の安定的な確保と供給を実現しました。更には、県、市により、関連事業として、末端かんがい施設の整備や区画整理を行い、農作物のブランド化と農業経営の安定向上を図っています。
1.受益面積
当初
水田 |
760ha |
畑 |
1,200ha |
合計 |
1,960ha |
平成26年度から導入の国営施設機能保全事業で計画変更
水田 |
727ha |
畑 |
1,211ha |
合計 |
1,938ha |
2.事業期間
着工:昭和56年度
完了:平成16年度
3.総事業費
766億円
4.主要施設
貯水池(天神ダム)
型式 |
中心遮水ゾーン型ロックフィルダム |
貯水量 |
有効貯水量620万㎥ |
堤高 |
62.5m |
堤長 |
441.7m |
揚水機(角上揚水機場)
揚水量 |
0.03㎡/s |
口径 |
100mm |
動力 |
45kw×2台 |
用水路(総延長)
導水路(幌型トンネル及びサイホン) |
2.5km |
幹線水路(管水路) |
34.9km |
支線水路(管水路) |
3.2km |
送水路(管水路) |
201km |
合計 |
42.7km |
調整池及びファームポンド
名称 |
有効貯水量 |
調整池 |
9,000㎡ |
梅谷FP |
8,200㎡ |
角上FP |
2,000㎡ |
鹿村野FP |
4,400㎡ |
北今泉FP |
3,500㎡ |
七野FP |
1,800㎡ |
石久保FP |
3,000㎡ |
元野FP |
1,600㎡ |
鏡州FP |
1,100㎡ |
大淀川右岸地区関連事業の実施状況
関連事業の概要
項目 |
地区数 |
面積 |
整備率 |
計画面積 |
31 |
1,938Ha |
|
整備済面積 |
22 |
1,558Ha |
84.2% |
整備中面積 |
1 |
75Ha |
84.2% |
未整備面積 |
8 |
305Ha |
|
給水栓設置済面積 |
|
1,047Ha |
54.0% |
関連事業継続・未採択状況
県営経営体育成基盤整備
村内 |
総事業費 |
1,086百万円 |
受益面積 |
75Ha |
予定工期 |
H23~H29 |
備考 |
H28ほ場整備実施 |
七野 |
総事業費 |
510百万円 |
受益面積 |
22Ha |
予定工期 |
H31~H35 |
拾ヶ島 |
総事業費 |
650百万円 |
受益面積 |
24Ha |
予定工期 |
H31~H35 |
鬼丸 |
総事業費 |
420百万円 |
受益面積 |
43Ha |
予定工期 |
H31~H35 |
県営畑総
桃ノ木原 |
総事業費 |
465百万円 |
受益面積 |
21Ha |
予定工期 |
H30~H35 |
さぎせ原2期 |
総事業費 |
470百万円 |
受益面積 |
72Ha |
予定工期 |
H31~H35 |
さぎせ原3期 |
総事業費 |
430百万円 |
受益面積 |
66Ha |
予定工期 |
H31~H35 |
農山漁村活性化交付金
松坂 |
総事業費(百万円) |
376 |
受益面積 |
32Ha |
予定工期 |
H31~H35 |
北川内 |
総事業費(百万円) |
201 |
受益面積 |
25Ha |
予定工期 |
H31~H35 |
村内地区のほ場整備実施状況
国営施設機能保全事業(大淀川右岸地区)
事業目的
大淀川右岸地区は平成16年度の国営事業が完了し、整備した農業水利施設は時間の経過とともに、電気設備の劣化に加えて平成17年の台風14号により上流山腹が崩壊したことにより、毎年土砂の流入が多くゲート設備の摩耗やダム湖の堆砂が進行しております。
また、管水路においては弁類の作動不良等により性能が低下しています。
今後、施設の劣化が進行すると維持管理に多大な経費と労力が必要となり、農業用水の安定供給に支障を来すため国営施設機能保全事業 を行い農業水利施設の整備を行うことにより、施設の長寿命化及び農業用水の安定供給が確保され、農業生産性の維持及び農業経営の安定が図られます。
主な工事計画
天神ダム(改修)
- 既存施設を改修し静水を選択放流
- 土砂流入防止施設の造成(ダムへの土砂流入を抑制)
- 電気設備の改修
- 河川放流を利用した小水力発電の設置
用水路(改修)
- 延長:38.1km
- 劣化した弁類、マンホール蓋の更新
- ファームポンドの補修
水管理施設(改修)
電気設備の改修
事業の期間
平成26年度から平成35年度(10ヶ年)
事業費
60億3千万円(平成28年度時点)
施設の現状
平成17年の山腹崩壊
濁流の流入
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ダム湖への流入
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ダム湖の流木・濁り
仕切弁の摩耗
電気設備
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ダム水管理データ収録装置(パソコン)
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ダム操作卓
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ダム堤体埋設計器収録装置